ContractS開発者ブログ

契約マネジメントシステム「ContractS CLM」の開発者ブログです。株式会社HolmesはContractS株式会社に社名変更しました。

プロダクトマネージャーとしてのヒアリングスキル

こんにちは。Holmesでプロダクトマネージャーをやっている井上と申します。 今回の記事は Holmes Advent Calendar 2020 - Qiita 17日目の記事です。

はじめに

プロダクトマネージャーのスキルには実に様々なものがあります。調べるとよく出てくるのが下記のプロダクトマネジメントのトライアングルにあたるものです。

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https://productlogic.org/2014/06/22/the-product-management-triangle/

もちろん全て欠かすことのできない重要な要素ではありますが、そのような中でも特に重要なものとして私が考えているのは、「ユーザヒアリング」です。(上記の図でいうところの「User Research」にあたる箇所になります。)

ユーザヒアリングの目的について

何故「ユーザヒアリング」を行う必要があるのか。 それはいかにお客様が抱えている課題を聞き出し理解し、その上で機能として実装するのかどうかを判断するためです。ここはひとつプロダクトマネジメントにとって大きな観点になります。

今回はその「ユーザヒアリング」を行う上で意識すべき点について書いていきたいと思います。

プロダクトマネジメントの文脈で書いてはおりますが、これは必ずしもプロダクト開発のみならず、どんな種類の仕事を行う上でもはたまた私生活にも十分応用できる考え方になります。

なお、内容についてはほとんどこちらの書籍を参考にしているのでご興味ある方がいれば是非読んでみてください。

「対話型ファシリテーションの手ほどき」

悪いヒアリング

『私たちは、「なぜ?」と聞かれるとつい「言い訳」をするようにできているのです。』

いきなりどきっとする記述がこちらの本の中にあります。

ヒアリングにおいて気をつけるべきことはこの一文につきると思います。 なぜと聞かれるとどうしても責められているように人間は受け取ってしまい、ちょっと濁して答えてしまったり言い訳のようなことをいってしまったりついついその場を逃れようとすぐに謝ったりします。皆様もご経験あるのではないのでしょうか。 (かく言う自分も「なんで?」「どうして?」と聞かれることが非常に苦手です・・・) そして本当に聞きたかったことが全然聞くことができなかったということになりがちです。

お客様へのヒアリングにしても往々にしてこういったことが発生しがちだなと思います。

私:「最近なかなかホームズクラウドを利用できていないみたいですね。どうしたんですか?」

お客様:「いや、ここのところちょっと忙しくて・・・」

私:「そうだったんですね、なんで最近忙しくなってきたんですか?」

お客様:「やらなきゃいけない業務もたくさんありますし・・・」

私:「そうですか、それは大変ですね。いつごろなら落ち着いてきそうですか?」

お客様:「うーん、なんとも言えないところですね・・・」

私:「そうですか、ではまた進捗確認しに打ち合わせさせていただきますね。」

上記の通り、実態はなんで忙しかったのか、どうすれば使ってもらえそうなのかといったことが何も分からず終わってしまいました。

おそらくこの調子だと次回の打ち合わせを行っても特に進捗はないでしょう。

青文字で書いてある部分が悪いヒアリングの部分です。その後事実確認をしようと赤文字の質問をしてはいますが、お客様からするとすでにかなり嫌な気分になっていると思われるのでここの回答も曖昧になってしまっていますね。

よく「なぜなぜ分析」をやったけど問題解決にならなかったというのは、なぜと聞くこと自体が本質的に感情に訴えかけているものなので、どこかに感情が入り込んでいるからだと思います。 問題解決のためには「なぜ」を分析すべきだ!というのはよく分かるのですが、上記の通りコミュニケーションが特に重要な場においては逆効果である可能性もあります。 (そもそもなぜなぜ分析は自分が関わる課題に対してやるのがよく、お客様に対してなぜなぜ分析をしたらおそらく嫌われると思っています笑)

良いヒアリング

では良いヒアリングとはなんでしょうか。

「なぜと聞いてしまうと人はついつい言い訳をしてしまう」 ということであれば、「なぜ」「どうして」を聞かずにとにかく、「何」「いつ」「どこ」「誰」を尋ねていくことと本の中にはあります。 そうやって事実確認のみを行いひたすら事実を積み上げていって、何が問題か何が課題なのかをこちらが推測で立てるのではなく、相手に自ら気づいてもらうことです。 そして本当に解決しなければいけない課題が浮き彫りになってきます。

先ほどの悪いヒアリングを良いヒアリングに置き換えるとどうなるでしょうか。

私:「最近なかなかホームズクラウドを利用できていないみたいですね。何かつまづいているところがありますか?」

お客様:「いや、つまづいているというよりは単純に時間がとれていないって感じですね。」

私:「そうだったんですね、時間がとれていないのは具体的にどなたになりますか?営業の方ですか?法務の方ですか?」

お客様:「うーん、主に法務部、というか私が今は立て込んでいてなかなか時間がとれていないですね。」

私:「そうですか、それは大変ですね。何の業務で忙しいんですか?」

お客様:「今は営業からの契約レビュー依頼がとてもたくさん来ているという状況で、、結構困っているんです。」

私:「主に困っている点はでしょうか?単純にレビュー自体に時間がかかるということでしょうか。それとも数が多く来すぎて把握・管理に時間がかかってしまうということでしょうか。」

お客様:「それでいうとまずは部長である私のもとにレビュー依頼は一旦寄せられるのですが、数が多いのとその依頼がメールで来るのでなかなか全体像が把握しづらいんです。ときには抜け漏れも発生してしまいそのことでまた営業から問合せがきて再度やりとりが発生して。。レビュー依頼の把握と担当者への割り降り等が煩雑になってきており、そこの管理に時間が取られてしまっているという状況です。」

私:「そうでしたか、ありがとうございます。」

この通り事実確認を積み重ねることにより、「業務が多忙でホームズクラウドを使っている暇がない」という認識から、業務多忙が実は課題ではなく「レビュー依頼の数が多く管理がしきれず把握に時間がとられてしまう、ときには抜け漏れも発生してしまうなど、コミュニケーションコストも大きく発生している。」という課題を掴むことができました。

そうすると後は、「各方面から来ているレビュー依頼について簡単に把握でき効率的に最適な担当者にさばけるようになる」ということは実現できればこのお客様はホームズクラウドを利用することで課題解決につながり、活用率も向上していくことでしょう。

さいごに

ユーザヒアリングは直接お客様の課題感を感じられる良い機会である一方、きちんと準備をして臨まないと単に時間の無駄になることも多いです。こちらが一方的に聞きたいことだけ聞こうとすると相手は萎縮してしまったり、意図したことが聞けなかったりということもあります。 そこで相手がいかに答えやすい形で事実確認の質問をするかが重要になってきます。

とつらつら書きましたが自分自身ももちろんまだまだ実践できてはいないため、今後も強く意識して頑張っていきたいところです。

参考書籍:「対話型ファシリテーションの手ほどき」