Contractsの倉島です。
アジャイル開発を行っているチームにとって、「振り返り(レトロスペクティブ)」は学びと成長のための重要なイベントです。でも、「いざやってみると、ただの雑談で終わってしまった」「具体的な改善に繋がらない」なんて悩みを抱えているチームも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、私が所属している開発チームが実際に行っている振り返りの様子を、実際のログを基にご紹介します。
Step 1:本題の前に心をほぐす「チェックイン」
私たちの振り返りは、いきなり本題から始まりません。まずは「チェックイン」と呼ばれる時間で、全員が安心して話せる雰囲気を作ります。
今回のテーマは「一押しのアイスは何ですか?」
倉島:「僕はもう鉄板ですけど『チョコモナカジャンボ』ですね。味が良くて、食感が良くて、手が汚れない。完璧です。」
Sさん:「なるほど!僕は量ですね。値段の割に一番量が多い『スーパーカップ』が最高です。昔、明治製菓に『かぼちゃ味を出してください!』ってハガキを送ったことがあるくらい好きで…」
Nさん:「僕はガーナの『チョコ&クッキーサンド』ですね。あとサーティワンの『ポッピングシャワー』も好きです。口の中でパチパチするやつ。」
倉島:「え、あれあんまり美味しくなかったですけど…口の中に違和感が残る感じで…」
こんな風に一見するとただのアイス談義ですが、仕事の話から離れてお互いの好みや人となりを知ることで、チーム内に心理的安全性が生まれます。「こんなこと言っても大丈夫かな?」という不安がなくなり、この後の振り返りで踏み込んだ意見も出しやすくなります。
Step 2:感情から課題までを可視化する「温度計の振り返り」
チェックインで場が温まったら、本題(振り返り)を行います。普段、その時に応じて色々な振り返り手法を利用していますが、今回は「温度計の振り返り」という手法を使っています。
これは、感情や出来事をカテゴリーに分けて、下から順番に付箋(ふせん)に書き出していく手法です。
- やり方
- 各項目について2分間、全員で一斉に黙々と付箋に書き出す。
- 全員が書き終わったら、順番に内容を共有していく。
- 温度計の5つの項目
- 感謝 (Gratitude):スプリント中の「ありがとう」を伝え合う。
- 気づき・学び (Insights/Learnings):新しく学んだことや、ハッとしたこと。
- よく分からなかったこと・興味のあること (Puzzles/Interests):疑問に思ったことや、もっと知りたいこと。
- 提案付きの苦情 (Complaints with Suggestions):課題と、それに対する改善案。
- 希望と願望 (Hopes/Wishes):「こうなったらもっと良くなるのに!」という未来への期待。
下から上(感謝→願望)へと進むことで、ポジティブな雰囲気から始め、徐々に課題解決へとスムーズに移行できるのが特徴です。

Step 3:課題を「具体的なアクション」に変えるプロセス
付箋を出して共有するだけだと、浅く議論して改善につながるアクションを生み出しづらいです。そこで、出てきた課題の中から、投票で特に重要なものを2つほど選び、その場で具体的な解決策を議論します。
今回のテーマ:「Gitのマージ忘れを防ぎたい」
今回は「リリース直前のGitのマージ忘れがヒヤッとした」という課題が選ばれました。
倉島:「人間は忘れる生き物なので、チェックリストみたいなアナログな方法じゃなくて、プロセスやシステムで解決したいですね」
Nさん:「同意ですが、そのための仕組みを作るのも大きくコストがかかりそうですね」
Sさん:「じゃあ、まず一番手軽に試せることからやってみませんか?スプリントの終わりに、全員で5分だけ集まってリリース対象のマージを確認する時間を設けるのはどうでしょう。」
このような会話を経て、一つの「Try(試してみること)」を決めました。
【決定したアクション】毎週火曜日の14:30から5分間、「マージ確認会」を全員で実施する。
このように、漠然とした「忘れないようにしたい」という願望を、「誰が」「いつ」「何をするか」という具体的なアクションアイテムに落とし込むことで、チームは着実に改善を積み重ねていくことができます。 また、Tryを実施した後に効果があるかの確認を次回以降の振り返りで行い、必要なアクションだけを残す行為も重要です。この際、可能であれば「何が」「いつまでに」「どうなっていれば」効果があったと言えるか、を定めておくとより効果的な振り返りができると思います。
まとめ
私たちの振り返りの様子、いかがでしたでしょうか?
この3つのステップを踏むことで、チームは毎週少しずつ強くなっています。 この記事が、皆さんのチームの振り返りをより良くするためのヒントになれば嬉しいです!