ContractS開発者ブログ

契約マネジメントシステム「ContractS CLM」の開発者ブログです。株式会社HolmesはContractS株式会社に社名変更しました。

なぜ自動テストは「負債」になるのか。Autify Meetup 2026で語られた安定化のポイントと実践ノウハウ

「自動テストを導入したけれど、保守が辛くて結局負債になっている……」そんな悩みを抱える開発現場は少なくありません。2026年3月12日に開催された『Autify Community Meetup 2026 #1』では、そんな「テストの負債化」を打破し、"攻めの品質保証"へと転換するための熱い知見が共有されました。

近年、ソフトウェア開発においてテスト自動化の導入が進む一方で、「保守工数の増大による本来の業務への圧迫」や「テスト失敗時の原因究明に伴う心理的・時間的負荷」といった、自動テストの「負債化」が多くの開発現場で共通の課題として浮上しています。本イベントでは、「自動テストの安定化」をメインテーマに掲げ、現場の最前線でこれらの課題に取り組み、顕著な成果を上げている登壇者より実践的な知見を共有していただきました。

1. テスト自動化を安定化させるポイント

本セッションでは、3名の登壇者により、実際の運用環境におけるテスト自動化のノウハウがLT形式で発表されました。

【LT1】リグレッションテストを2週間→2日へ

最初の登壇者からは、複雑な業務ソリューションにおいて、月間4.5万ステップ年間54万ステップという大規模な自動テストを運用している実績が報告されました。この継続的な取り組みにより、従来1〜2週間を要していたリグレッションテストの期間が、1〜2日へと大幅に短縮されたとのこと。

さらに特筆すべき点として、不具合検知率が9.9%に達していることが挙げられました。これは、テスト失敗の約半数が実際の不具合や仕様変更に起因していることを意味し、テスト群の極めて高い信頼性を示唆しています。

安定運用のための具体的な施策として、以下の3点が提示されました。

  • 適切な待機(wait)処理の設定:
    • 実行環境における応答速度の変動を許容しつつ、週次での定期実行によって早期に異常を検知する体制の構築。
  • XPATHを用いた動的ID対策:
    • 特定のプラットフォームに散見される不安定な要素指定に対し、堅牢な記述手法を採用することで安定性を確保。
  • 二要素認証(2FA)の制限回避:
    • 連続試行回数の制限(50回)を回避するため、全シナリオ間でセッション情報を共有・再利用し、認証プロセスを最小化する設計の導入。
【LT2】「録画(レコード)」依存からの脱却とテストの組織的運用

次いで、テスト自動化の導入期に陥りやすい「手動操作の単純な録画(レコード)」の危険性について指摘がなされました。録画によるシナリオ生成に過度に依存した場合、テストスクリプトが肥大化し、将来的な製品仕様の変更に伴う保守コストが指数関数的に増大する傾向があります。これが自動化プロジェクト頓挫の主要因となり得ると論じられました。

自動テストを単なるツールとしてではなく、「継続的に保守・改善を行うべき組織的な仕組み(生きた組織)」として捉えることの重要性を説いていました。

  • 主要機能への焦点化:
    • 全機能を網羅するという非現実的な目標を排し、品質保証上不可欠な重要機能に絞ったテスト設計を行う。   
  • テストスクリプトの鮮度維持:
    • 日次あるいは週次での高頻度な実行を通じ、対象製品の変化に即座に追従できる体制を維持する。
【LT3】運用プロセスの改善によるアンチパターンの打破

最後の発表では、自動テスト運用において頻出するアンチパターンとその解決策が提示されました。「保守作業の恒常的な後回し」という悪循環を断ち切るための具体的な方策として、「自動テストを通過したコードのみマージを許可する」といった、開発フローへの強制的な組み込みが有効であると指摘されています。

初期段階から完璧なテスト網羅を追求するのではなく、スモールスタートから始め、効果を定量的に可視化しながら段階的なプロセス改善を図ることが、長期的な安定稼働への最適解であると結論付けられました。

2. ハプニングも味方に 開発者の生実況でデモ

ここで1つ、イベントの熱量を象徴するエピソードをご紹介します。

動画デモの最中に音声が途切れるトラブルが発生したのですが、会場にいたデモ動画の作成者が即座にマイクを握り、無音動画に合わせた生実況で解説を代行。

トラブルもなんのその、臨機応変にさすがのご対応でした。

会場からは温かい拍手に包まれました^^

3. 総括:高度なツールの活用に不可欠な運用体制と意識改革

このMeetupを通じて得られた最大の結論は、「ツールの機能がいかに高度化しようとも、それを適切に運用するための組織的な体制と、担当者のマインドセットが不可欠である」という点であるということでした。

強力なテスト自動化ツールの導入は、保守工数の削減という直接的な恩恵をもたらす可能性を秘めていますが、ツールを活用し、形骸化しない「実効性のあるテスト」を組織内に定着させ、ひいては品質向上とリリースサイクルの短縮というビジネス価値の創出に結びつけるためには、品質保証に携わるエンジニアおよび開発陣の継続的なコミットメントが求められます。

自動テストを「負債」から「攻めの品質保証」の要へと転換するための戦略的アプローチが多数共有された本イベントは、今後のテスト自動化のあり方を考えていく上で非常に参考になるイベントでした。